コンシューマー向け膣内マイクロバイオーム自宅検査のEvvy、Series Bで$40M調達【NEXTBLUEニュースレター9月号】

皆様こんにちは。日米欧の女性のウェルビーイング領域に投資をするベンチャーキャピタル、NEXTBLUEの大嶋です。
今月は、投資先の🇺🇸Teal Healthと🇯🇵ジョサンシーズが、それぞれシリーズAの資金調達を発表しました。NEXTBLUEも両社に追加出資しています。自宅での子宮頸がんスクリーニングと、助産師による産前産後のケア。事業の形は異なりますが、どちらも必要な医療やケアを、より利用しやすい形で届ける企業です。
今月の注目ニュースでは、$40Mを調達した米Evvyを取り上げます。私自身、2021年に同社の自宅検査を試してから、その成長を追ってきました。消費者向けの膣内マイクロバイオーム検査から始まった同社が、蓄積したデータをもとに、女性の個別化医療へどう事業を広げようとしているのか。過去のマイクロバイオーム企業の事例や、追加出資したLabcorpの戦略も交えながら考えます。
あわせて、Bloomlife、Sage Haven、Eli Healthの最新ニュースと、ベイエリアで開催された女性VCパネルへの登壇報告をお届けします。
【出資報告】
自宅で子宮頸がんスクリーニングを可能にする米Teal Healthが、.406 Ventures主導のシリーズAで$22Mを調達しました。NEXTBLUE2号ファンドも、2025年1月の初回投資に続いて追加出資しています。今回のラウンドには既存投資家のEmerson Collective、Forerunner、Serena Venturesに加え、日本のMPower Partnersも新たに参加し、累計調達額は$45Mとなりました。
Teal Healthは、自宅でHPV(ヒトパピローマウイルス)検査用の検体を採取できるデバイス「Teal Wand」と、オンライン診療、検査結果の提供、必要に応じたフォローアップを一体で提供しています。初回投資時にはまだFDA審査中でしたが、2025年に認可を取得し、現在は全米で数千人の女性に利用されています。
同社によると、利用者の59%は、それまで推奨される頻度でスクリーニングを受けられていなかった層でした。予約の取りづらさや時間的・身体的負担などによって検診から遠ざかっていた女性に、新たな選択肢を届けている点を、私たちは評価しています。
今回の調達では、2027年から予定される保険適用の拡大を見据え、医療機関、保険会社、雇用主などとの連携を強化します。NEXTBLUEも米国での成長を支援するとともに、将来的な日本展開の可能性を視野に、国内の医療機関や企業との連携機会を引き続き検討してまいります。
追加出資の背景・事業の詳細は、ブログ記事にてご紹介しています。
助産師を中心とした産前産後ケアのプラットフォームを展開するジョサンシーズが、シリーズAで4億円を調達しました。WPower Fundがリードし、NEXTBLUE2号ファンドが追加出資したほか、NEXTBLUE TOKYOも新たに参画しています。今回の調達により、累計調達額は約6.8億円となりました。
同社は約3,000名の助産師ネットワークを軸に、低月齢児のベビーシッターなどの訪問ケア、産後ケア施設の運営、産院向け人材サービスを展開しています。家庭の「専門性の高いサポートを受けたい」というニーズと、助産師の「資格を活かして柔軟に働きたい」というニーズを結びつける事業です。
日本では産後ケア政策が拡充する一方、必要な家庭に支援を届ける体制はまだ十分ではありません。ジョサンシーズは、自治体との連携や施設・訪問・人材サービスの展開を通じて、ケアの担い手と提供機会の両方を増やしてきました。NEXTBLUEは、同社が取り組む市場の大きさとチームの実行力を評価し、今回の追加出資を決定しました。調達のリリースはこちら。
また、今回の資金調達は日本経済新聞でも取り上げられています。詳細はこちら。
【今月の注目ニュース】
▍概要
膣内マイクロバイオームの自宅検査を提供する🇺🇸Evvyが、Catalio Capital Management主導のシリーズBで$40Mを調達しました。既存投資家のLabcorp Venture Fundも追加出資しています。
2021年創業の同社は、自宅で採取した検体を解析し、臨床医による確認や、必要に応じた治療までを提供しています。現在は全米で10万人超の患者に利用され、3,000人の医療従事者と連携。膣内マイクロバイオームと症状、治療、その後の健康状態を結びつけたデータを蓄積してきました。
今回の調達を通じて、不妊・生殖医療をはじめとする研究を拡大します。すでに体外受精(IVF)クリニックで前向き研究を進めており、膣の健康にとどまらず、女性の個別化医療を支える基盤となることを目指しています。
▍NEXTBLUEの分析
※本ニュースレターでは、分析の一部を抜粋・再編集してお届けします。Femtech Global Insightsの記事では、過去のマイクロバイオーム企業との比較や、Evvyの継続利用を支える仕組み、Labcorpの投資戦略について、さらに詳しく解説しています。
コンシューマー向け自宅検査から、女性の個別化医療企業へ
私自身が検査を利用し、体験レポートを書いた2021年当時、Evvyは膣内マイクロバイオームを自宅で調べるという、新しい検査カテゴリーを開拓していました。膣の不調を繰り返す女性に、自分の身体の状態を知る手段を提供する。同時に、従来十分に収集されてこなかった女性の生物学的データを、消費者との直接の接点を通じて蓄積できる事業モデルでもありました。
それから5年。今回の調達で注目しているのは、Evvyが自宅検査を通じて蓄積したデータを、女性の健康に関する研究や診断へ本格的に活用しようとしている点です。創業者も今回のシリーズBを、創業時から構想していた「第2段階」へ進むための資金調達と説明しています。消費者向けサービスを育てながら集めてきたデータを、個別化医療へつなげる。その転換を加速するための$40Mと捉えています。
AI時代の競争力を支える、独自データを生み出す仕組み
Evvyは今年「EvvyAI」を立ち上げました。同社の競争力を考える上で注目したいのは、10万人超から採取した膣内マイクロバイオームのデータと、それに紐づく200以上の臨床データ項目です。
AIの基盤モデルは多くの企業が利用できますが、女性の身体から取得した生物学的データに、症状、治療、その後の経過まで結びついたデータは、簡単には再現できません。患者が検査を受け、必要に応じて治療し、再検査する。この過程で「どんな状態の人に、どんな治療をした結果、身体がどう変化したのか」が蓄積されていきます。
この循環を通じて診断や治療を改善し、その価値を患者や医療従事者に還元できれば、事業としての強みも増していきます。AIを活用できる独自データを、日々のサービスの中で継続的に取得できることが重要だと思います。
消費者向け検査の難しさを、どう乗り越えてきたのか
そもそも、「まず消費者向けサービスでユーザーを集め、データを蓄積し、そのデータを使って個別化医療へ進む」という戦略は魅力的に見える一方、実際にはかなり難しいモデルです。
Evvyも、新しい検査カテゴリーを消費者に説明し、自費で利用してもらう難しさを抱えていました。それでも成長してきた背景には、細菌性膣症やカンジダなどを繰り返し、既存の診療では十分な答えを得られなかった人たちの存在があります。実際に、Evvyは、利用者の大多数はもともと膣の健康に問題を抱えており、好奇心から検査する人は約10%、50%以上が3カ月ごとの定期利用者だと話しています。
さらに、同社は、検査結果の提供から、臨床医による確認、必要に応じた処方治療、コーチング、再検査までサービスを広げてきました。利用者は治療後の変化を確認でき、Evvy側も治療とその後の経過を把握できます。継続して利用する理由と、より価値の高いデータを得る仕組みが結びついている点が特徴です。
Labcorpの追加出資をどう見るか
今回の投資家の中で注目しているのが、シリーズAに続いて追加出資した米臨床検査大手Labcorpの投資部門、Labcorp Venture Fundです。Labcorpは、患者が利便性や選択肢、価格の透明性を求める流れを市場機会と捉え、消費者向け検査サービスを拡大しています。Labcorpは、Evvyに加え、NEXTBLUE投資先のTeal Healthや、自宅採血を提供するGetlabsにも投資しています。
Labcorpが強みを持つのは、検査技術、ラボ、医療機関との接点です。一方、Evvyは、女性が自ら検査を購入し、結果を理解し、治療を受け、再び利用するという、コンシューマーとの継続的な関係を築いています。私の解釈では、LabcorpにとってEvvyは、検査の自宅化が進むなかで、検査後のケアや継続的なデータ取得まで含めた事業のあり方を学べる投資先でもあります。
次の焦点は、不妊・生殖医療で臨床的な価値を示せるか
Evvyが次に重点的に研究を進めるのが、不妊・生殖医療です。すでに体外受精(IVF)クリニックで、治療前の膣内マイクロバイオームを測定し、その後の着床や妊娠結果を追跡しています。ここで有用な指標を見つけられれば、膣の健康を入り口に、より広い女性の健康領域へ展開する可能性が開けます。
一方で、マイクロバイオームと妊娠結果に関連があること、結果を高い精度で予測できること、治療によって結果を改善できることは、それぞれ別です。現時点では研究段階であり、臨床的な有用性の検証が必要です。
独自データから、既存医療では得られなかった答えを作れるのか。不妊・生殖医療への展開は、Evvyが女性の個別化医療企業へ成長できるかを見極める重要なステップだと考えています。
本記事は、NEXTBLUEが運営する Femtech Global Insights の配信内容の一例です。
国内唯一の海外フェムテック/ヘルスケア特化プラットフォームとして、週3〜4本の海外ニュースを、投資家視点の解説コメント付きでお届けしています。
【投資先ニュース】
妊娠中の遠隔モニタリングを手がける🇺🇸Bloomlifeが、10月8日に米ニューメキシコ州アルバカーキで開催されるHealthAI Summit 2026のBuilders VC Innovation Showcaseに登壇します。
医療機関のリーダー、起業家、投資家、研究者、政策関係者など約200名が集まる場で、ハイリスク妊娠における健診と健診の間のケアを、遠隔モニタリングによってどう支えられるかを紹介する予定です。ニューメキシコ州の医療提供にどのように貢献できるかについても議論します。
子ども向けの安全なメッセージングプラットフォームを提供する🇺🇸Sage Havenが、米テック市場の有望企業50社を選ぶTechRound「US50 2026」に選出されました。審査員からは、子どものデジタルウェルビーイングに対する人間中心のアプローチが評価されています。選出の詳細はこちら。
Sage Havenの事業内容や、NEXTBLUEが出資した背景については、こちらの出資報告記事(日本語)でご紹介しています。
唾液を使った自宅ホルモン測定キットの🇨🇦Eli Healthが、Thesis傘下のサプリメントブランドStasisとの提携を発表しました。Stasisは、ADHD治療などで使われる刺激薬の服用者に向けて、日中と夜間のコンディションを支えるサプリメントを展開しています。
Eliの発表によると、今回の提携は、Stasis利用者が感じる体調の変化に、コルチゾールの測定データを組み合わせ、身体への理解を深めることを目指すものです。Eli Healthの「Hormometer」は、唾液中のコルチゾールを約20分で測定します。発表では、単発の測定だけでなく、時間帯や生活習慣によって変化するコルチゾールのリズムを捉える意義を強調しています。
既存のウェルネスブランドとの連携を通じて、Eliのホルモン測定技術の利用場面を広げる取り組みです。詳細はこちら。
【登壇報告】
9月、米パロアルトで開催された、JWIBA(Japanese Women’s Initiative in the Bay Area)主催の「スタートアップ投資の世界で働くという選択肢〜VC業界で働く日本人女性たちの本音トーク〜」に、米国パートナー大嶋が登壇しました。当日は、会場が満員となる70名以上の皆様にご参加いただきました。
当日は、ベイエリアでベンチャーキャピタルに携わる日本人女性4名が集まり、それぞれのキャリア、VCの仕事の実際、業界で経験してきた課題や機会についてお話ししました。
登壇者や参加者の皆様との対話から、私自身も多くの学びを得る機会となりました。女性のキャリア形成を応援する方々にもご参加いただき、業界や立場を超えて意見を交わせたことを嬉しく思います。開催にご尽力くださったJWIBAの皆様、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後も、女性の健康・ヘルスケアイノベーションの欧米最前線をお届けしてまいります。
日々の海外スタートアップ情報は、NEXTBLUEのFacebook・Xでも発信しています。ご関心があればぜひご覧ください。







