アメリカ発、妊産婦向けPHR(パーソナルヘルスレコード)アプリのTrellis Healthに出資しました

この度、NEXTBLUE2号ファンドは、シアトルを拠点とするスタートアップTrellis Healthに出資したことをお知らせします。同社は、複数の医療機関に分散している電子カルテデータを横断的に収集し、
統合することで作成したPHR(パーソナルヘルスレコード)を妊産婦女性向けに提供する健康管理アプリを開発しています。

今回の$1.8Mのプレシードラウンドには、NEXTBLUEのほか、Palette VenturesSwizzle VenturesSuncoast VenturesSundial Foundationなどのベンチャーキャピタルに加え、Flo Healthの共同創業者であるYuri GurskiとAndrei Kouzel、Simpleの創業者兼CEOであるMike Prytkov、How Women InvestのNaseem Sayaniなどのエンジェル投資家が参加しました。

一般消費者にとってアクセスしづらい医療データ

医療記録は、病院や診療所ごとに管理されており、電子カルテやウェアラブルデバイス、自宅検査などのデータは増え続けているにもかかわらず、一般消費者がそれらを統合・活用することは難しいのが現状です。その結果、多くの人が健康に関する疑問を解決するために、ネット検索に頼らざるを得ず、特に妊娠中の女性は1日に平均3回以上検索するというデータもあります。

近年、医療記録の分野ではM&Aや大型資金調達が活発に行われていますが、その多くはB2Bビジネスモデルで、医療提供者、保険会社、製薬企業などが主な対象でした。一般消費者向けのサービスも存在しますが、特定の疾患を持つ患者データを製薬会社に販売するモデルや、一部の富裕層向けバイオハッキングサービスが中心でした。つまり、幅広い一般消費者向けに医療記録を統合し、わかりやすく解析・活用できるサービスは、まだ存在していません。

Trellis Healthの提供するソリューション

Trellis Healthは、こうした課題を解決するため、以下の機能を備えた消費者向けアプリを開発しました。

  • 診療を受けた医療機関の電子カルテなど、複数の情報源から過去10年以上の個人の健康データを単一プラットフォームに統合
  • AIを活用し、複雑な医療記録を一般消費者にも理解しやすい形に翻訳。血圧や血糖値などの検査結果をタイムライン化し、個人の平均値を測定
  • 妊産婦と医療従事者のコミュニケーションを支援するツール(症状に基づき、次の診療で質問すべき内容をAIが提案など)

ヘルスケアデータの専門家である創業者

Trellis Healthは、ヘルスケアデータの専門家であるエステル・ギロード氏とライアン・ナバト氏によって2022年に設立されました。

ギロード氏は、集団遺伝学(Population Genomics)の博士号を取得し、Illumina(遺伝子解析ツール開発)にて年間4億ドル規模のビジネスを構築した実績を持ちます。未加工のゲノムデータを大規模に医療記録へ統合する専門知識を有しています。

ライアン・ナバト氏は、2型糖尿病向けヘルステックスタートアップ「Virta Health」(総調達額3億7300万ドル)の成長を牽引した経験を持ちます。

目指す未来

Trellis Healthは、単なる妊娠アプリではなく、女性の生涯にわたる健康管理を支える「オペレーティング・システム」として設計されています。データに基づく洞察と専門家のサポートを提供し、妊娠・出産後・それ以降のライフステージにおいて、パーソナライズされた信頼できるガイダンスを提供します。同社は、医療機関との提携を通じて、妊産婦が深夜にネット検索を繰り返す必要のない未来を実現していきます。

NEXTBLUEがTrellis Healthに投資した理由

米国では、個人の健康・ウェルネスへの投資が年々増加しています。しかし、ヘルスケアやウェルネス領域は、金融や小売と比べてデジタル化が遅れており、消費者はより便利でデジタルなツールを求めています。

特に、病院外での健康管理は一般化しており、自宅検査やウェアラブルデバイスを活用する人が増えています。実際、健康トラッキングのためにウェアラブルを使用する割合は、Z世代で60%、ミレニアル世代で66%に達しています(Rock Health, 2025年)。しかし、ウェアラブルデバイスのデータ、自宅検査の結果、病院での診療記録はそれぞれ別の管理主体によって分断されており、一元的に活用することができません。

このような課題を解決する同社のソリューションには、大きな可能性を感じています。同社は、これまで断片的だった医療データを統合し、消費者が自らの健康状態を包括的に把握できる環境を提供します。

また、投資を決めたもう一つの理由は、強力な創業チームの存在です。共同創業者兼CEOのギロード氏は、消費者向けヘルスケアデータの分析・活用に関する10年以上の経験を持ち、共同創業者兼CTOのナバト氏は、大手デジタルヘルス企業でのプロダクト開発経験を有しています。彼女たちの専門性と実行力は、同社が市場で成功する上での大きな強みとなると確信しています。

同社のビジョンは、インクルーシブなヘルスケアを推進する起業家を支援するというNEXTBLUEのコミットメントに合致しており、今後のさらなる成長を期待しています。

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