「女性向けウェルネス」は次のフェーズへ——鍵はライフステージと具体的な悩み【NEXTBLUEニュースレター8月号】

皆様こんにちは。日米欧の女性のウェルビーイング領域に投資をするベンチャーキャピタル、NEXTBLUEの大嶋です。

本号の今月の注目ニュースでは、米国の消費者の現状を分析したレポート、「State of the Consumer 2026」を取り上げています。AI主導の購買経路、健康革命、体験経済、倹約志向——4つの潮流が同時進行するなかで、女性の健康市場の需要がどう変質しているのか、NEXTBLUEの視点から解説しています。

また、投資先ジョサンシーズの東京都「赤ちゃんファースト」カタログ掲載、Anise HealthのNY Tech Week登壇、Eli Healthの米メディア掲載など、投資先の最新動向もお届けします。


【今月の注目ニュース】

▍概要

マッキンゼーの「State of the Consumer 2026」は、ブラジル・フランス・ドイツ・英国・米国の消費者4,863名を対象とした調査をもとに、技術進化とコスト意識という2つの力が消費セクターを再構築していると分析しています。

レポート内で言及されていたトレンドは下記の4点です。

①テクノロジー主導の購買経路

Z世代の28%がすでに買い物に生成AIを使い、60%が検索のAI要約を日常的に利用。LLMがブランドについて回答する際に引用する情報源のうち、ブランド自社サイトはわずか1%にとどまり、従来のSEOに加えてGEO(生成エンジン最適化)が不可欠になると指摘します。

②健康革命

健康の定義が心臓・認知機能・睡眠・ストレス・腸内環境まで多次元化する一方、ウェルネス目標を達成できていると答えた消費者は半数未満。更年期や代謝老化など、従来手当てされてこなかった領域が新たな成長機会として浮上しています。

③体験経済

2023〜25年の体験市場は年2.6%成長し、非必需品の0.8%を大きく上回りました

④倹約する消費者

82%が買い替えを遅らせ、69%が修理する——しかもこの行動は低所得層に限られず、高所得層が「選択として」最適化行動を取っている点が注目されます。

▍NEXTBLUEの分析

本レポートは消費者全体の行動変化を分析したものですが、ここでは女性のウェルビーイング市場への投資という観点から、重要だと考えるポイントに絞って取り上げます。
※Femtech Global Insightsの記事では、生成エンジン最適化やエージェンティックコマース、日本のウェルネス市場への示唆まで含めたフルバージョンのコメントを掲載しています。

ウェルネス→ライフステージ×具体的な悩みへ。需要の解像度が上がった

女性の健康の観点で最も重要な変化は、漠然とした”ウェルネス”から、ライフステージに基づく具体的なニーズへ消費者需要が移行していることです。プレ更年期、腸内環境、代謝的な老化といった、歴史的に手当てされてこなかった領域に関心が集まっている点を見ると、これは市場定義そのものの変化です。汎用的なウェルネス製品はポジションを失い、特定の症状や悩みに対して明確な効果を約束できる製品だけが選ばれる。投資判断の基準も同様で、「女性の健康市場全体が成長している」という総量の議論ではなく、どのライフステージのどの課題を、どの程度の解像度で解いているかが、企業評価の軸になります。

レポートは、GLP-1の使用が筋肉量減少と関連づけられた結果、女性向けに設計された筋力・骨密度の維持を狙った重り付きベストが登場していることを紹介しています。ひとつの医療介入が消費財の隣接カテゴリーを連鎖的に生み出す構造をよく表した事例です。女性のウェルビーイング投資においても、治療そのものだけではなく、その前後に生じる生活領域のニーズ(栄養、運動、睡眠、ケアのナビゲーション)も投資可能な市場になり得ると考えます。

可視化と行動変容の間の大きなギャップ=市場機会

健康領域の重要度は極めて高く、認知機能58%、心臓の健康60%、睡眠55%が「非常に重要」と回答しています。にもかかわらず、ウェルネス目標を達成できていると答えた消費者は半数に届きません。これは典型的な意図と実行の乖離であり、ビジネス機会が生まれる場所そのものです。計測手段は既に普及し(スマートウォッチ・CGM等の利用はZ世代75%、ミレニアル73%)、健康・ウェルネス目的でLLMを利用する消費者も22%に達しています。計測(ウェアラブル)と解釈(LLM)が揃いつつある今、次に必要なのは、個人の状態に合わせた具体的な行動設計です。このラストマイル部分に、事業参入機会があると見ています。

支出は一部の層に集中する

科学的根拠のある製品や技術を積極的に試す「マキシマリスト・オプティマイザー(いわゆるバイオハッカー)」がウェルネス消費者の約25%でありながら、市場支出の40%超を占めるという分析も示唆的です。日本でも、この高LTVのアーリーアダプター層をどう定義し獲得するかが、デジタルヘルス・女性のウェルビーイング企業の初期成長を左右します。逆に言えば、マス市場を最初から狙う設計は、この構造では合理的ではありません。

ウェルネスは、贅沢ではなくベースライン

「臨時収入200ドルを自分のために使うなら」という設問でヘルス&ウェルネスを選んだのは約8%。世代を通じて最も多かった回答は「休暇のために取っておく」でした。レポートはこれを、ウェルネスが「裁量的な贅沢」ではなく「基礎的な優先事項」として位置づけられている証拠だと解釈しています。重要性は高いが、財布から追加で出す対象にはなりにくい。この非対称性は、消費者に高単価の自費サービスを直接販売するモデルの難しさを示しており、日本においてはB2B2Cモデル、あるいは負担感の小さい継続課金モデルの妥当性を裏づけるものだと考えます。誰が価値を認識し、誰が支払うのかを分けて設計することが、この市場では引き続き成否を分けます。


本記事は、NEXTBLUEが運営する Femtech Global Insights の配信内容の一例です。

国内唯一の海外フェムテック/ヘルスケア特化プラットフォームとして、週3〜4本の海外ニュースを、投資家視点の解説コメント付きでお届けしています。


【投資先ニュース】

🇨🇦Eli Healthの自宅コルチゾール検査Hormometerが、米国の更年期世代女性向けメディアFlow Spaceに体験レビュー記事として掲載されました。

記事では、45歳のライターが唾液採取から約20分・アプリのスキャンだけで結果が出る手軽さを紹介。運動直後でもコルチゾールが上がらないなど、自身のストレス応答の乱れを初めて「データ」として可視化できた体験を綴り、更年期専門医との診察に結果を持参できることへの期待を語っています。創業者Marina Pavlovic Rivasのコメントも引用され、ラボ検査が数点のスナップショットしか提供できないのに対し、Hormometerはリアルタイムで縦断的な個人データを構築できること、そして更年期移行期の女性にとってコルチゾールの可視化が特に大きな意味を持つことが紹介されています。詳細はこちら

🇯🇵ジョサンシーズが提供する産後支援サービスが、東京都が実施する出産・子育て応援事業「赤ちゃんファースト」において、ポイント交換できる子育て支援サービスとしてカタログ掲載されました。

「赤ちゃんファースト」は、育児用品や子育て支援サービス等を選べるギフトカードを東京都が子育て家庭向けに提供する事業です。今回の掲載により、おうち産後ケア(ベビーシッター)や、託児付きアロマトリートメント・宿泊型産後ケアなどの産後ケア施設サービスを、都内の家庭がポイントで気軽に利用できるようになりました。詳細はこちら

🇺🇸 Anise Health:NY Tech Week中のヘルスケアパネルイベントに登壇

アジア系アメリカ人向けメンタルヘルスプラットフォームを構築する🇺🇸Anise HealthのCEO Alice Zhangが、NY Tech Weekのパネルイベント「Innovation, Access, and Value in Healthcare」に登壇しました。Oscar HealthのDirector of AffordabilityであるJaime Morrison氏、AHA VenturesのManaging DirectorであるElise King氏らとともに、元ニューヨーク州メディケイド政策アドバイザーのCarlos Cuevas氏のモデレートのもと、ヘルステックの次の時代について議論しました。

パネルでは、「オンラインで便利」という価値提供の段階は終わり、臨床的有効性の実証・保険者との統合・持続可能なケア提供が次の競争軸になるという認識が共有されました。Anise Healthは創業者の立場から、文化的背景に合わせたケアモデルと専門的なプロバイダー訓練が、十分な医療を受けられてこなかったコミュニティの患者エンゲージメントを高めると同時に、ペイヤーが求める測定可能なアウトカムを生み出せることを紹介しました。


【登壇報告】

サンフランシスコで開催されたパネルイベントInside the Investor Mindに、米国パートナーの大嶋が登壇しました。投資家はピッチを聞きながら、実際のところ何を見て、考えているのか。普段は表に出ない投資家側の頭の中を、創業者に向けて率直に共有するイベントです。

NEXTBLUEのFacebookにて、当日の議論のまとめをご紹介していますので、米国での資金調達を検討されている方はぜひご覧ください。詳細はこちら


【登壇情報】

カリフォルニア サンフランシスコ・ベイエリアと日本社会に関わる女性を中心としたコミュニティ、JWIBAが開催するイベント「スタートアップ投資の世界で働くという選択肢〜VC業界で働く日本人女性たちの本音トーク〜」(Japan Innovation Campus, Palo Alto)に、米国パートナーの大嶋がパネリストとして登壇します。ベイエリアでご参加可能な方は、ぜひお越しください。詳細・お申し込みはこちら


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今後も、女性の健康・ヘルスケアイノベーションの欧米最前線をお届けしてまいります。

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