2021年、コロナ禍でも急激に伸びている欧州フードテック領域がアツくて、面白い!
COVID-19が世界的な脅威となり、ロックダウン、リモートワーク、学校閉鎖等人々の生活に多大な影響を及ぼし始めてからすでに一年半が経とうとしています。
しかしながら、各国政府の金融政策や経済援助が功を奏し、株価はむしろ高止まりしており、投資意欲も依然高い状態を維持しているように見えます。
我々のベンチャーキャピタル業界も、若干の投資戦略の修正は余儀なくされたものの、グローバルでのスタートアップへの投資額は2019年と比較すると3%増とほぼCOVID-19前の水準で推移しています(グラフ1)。
地域別に見てみると、日本は微減ではあるものの、米国・欧州はともに大幅に増えています。
米国は$156Bn(対2019年13%増)、欧州は$49Bn(対2019年30%増)、日本は$6.5Bn(対2019年3%減)。
2020年にユニコーン入りしたスタートアップの数をみても、米国は122社、欧州は10社とどちらも過去最高を記録しており、COVID-19の影響を全く受けていないことに驚きの声が上がっています。米国のVCは過去に何度も今回のようにマクロ環境に大きく影響を与える事象に遭遇しており、逆にそのような環境だからこそ成長する領域があることを経験しているためだとも言われています。次回のブログでご紹介する予定ですが、COVID-19環境下であったからこそ急成長したと言えるスタートアップがいくつもあります。Grocery Delivery ServiceのGorillasに至っては、マクロ環境の変化の波に乗り、9ヶ月でユニコーン入りを果たしました。現在$1Bn以上のラウンドをクローズしようとしているという話を聞きました。
最新の2021年Q1の投資額データを見ると(グラフ2)、引き続き投資意欲が旺盛で、過去最高額の$125Bnがスタートアップに投資されました。前四半期と比べると+50%の投資額となっています。また、2021年Q1だけで、米国は125社がユニコーン入り、欧州はなんと19社が第一四半期だけでユニコーン入りをしました。
このまま行くと2021年は欧米のスタートアップにとっては歴史的な年になりそうですね!!
しかし、全ての業界で投資が増えているわけではなく、前述した通り、COVID-19下での勝者と敗者が明確にあります。NEXTBLUEが主に投資を行なっている欧州に目を向けてみると、フィンテック、DX、エネルギー、ヘルステック、フードテックに特に資金が流入しています(グラフ3)。
今回はその中でも我々が最近注目しているフードテックの領域を見ていきたいと思います!
フードテックの定義は広く、一般的には、アグリカルチャーテック、フードサイエンス、フードサービス、デリバリー、リテール、コーチングの6つの領域に分かれています。予約管理、ロジスティックスの効率化、データの可視化等のフードに関わらるSaas的なサービスはフードサービスの領域に入ります。また、培養肉、植物性由来の肉、植物性由来のミルク、機能性食品、細胞農業等はフードサイエンスの領域に入ります。コーチングは、消費者に対する教育的な要素のものが多く、栄養バランスの分析とそれに基づくアドバイスを提供しているアプリ等はこちらに入ります。
今まで欧州のフードテック領域はデリバリーが牽引しており、Deliveroo、Wolt、Delivery Hero等多くのユニコーンが生まれています。グラフ4をみていただければおわかりいただける通り、2019年まではほぼデリバリー事業にしか投資が集まらなかったのが欧州のフードテックでした。
また、デリバリー領域のスタートアップの資金調達の周期が全社同じなのか、デリバリー領域は隔年毎に資金が流入する傾向にあり、奇数年は投資額が一気に増えるのに対し、偶数年である2016年・2018年・2020年はデリバリー領域への投資額が減少しました。過去にはその影響で、隔年でフードテック領域全体への投資額が減る傾向にありました。
しかし2020年はフードテックの転換点とも言えるような年だったと評価されており、デリバリー領域への投資額が減ったにも関わらずフードテック領域への投資額は2019年とほぼ同額がフードテック領域へ投資が流れ込み、フードテック全体での投資額を維持しました。(グラフ4は2020年の途中経過ですが、最終的には2019年と同額の€2.7Bnまで投資額が増えました)
どこに流れ込んだのかというと、Foodscience(”Future of Food”という領域)、Foodservice(主にフード関連のデジタルトランスフォメーション)、そしてアグリテックも投資額が増えています。
グラフ5は欧州のFoodtech Hype Cycleですが、左に行くほど研究開発的な要素が強く、右に行くほど実用性が高まっているということになります。2020-2021年は、すでに導入が進んでいる”Plant Based alternatives”、”Grocery delivery”、”Insect for animal feed”、”Transparency and Traceability”、”Supply Chain Digitization”、及びHype Cycleの左側の”Excitement”に位置している”Cellular Agriculture”、”Dark Stores”、”Biomass fermentation”、”Smart Packaging”に資金が集まっています。
また、グラフ6はスタートアップの成熟度別での投資額を表していますが、2020年はシリーズAに多くの資金が流入していることがわかります。これは、1ディールあたりの調達額が増えているという背景もありますが、欧州のフードテック領域の投資家が、この領域に対して大きなリターンを得られるという自信を持っているという証拠でもあります。
今まで欧州の投資家は非常に保守的でアーリーステージのリスクマネーが少なかったので、ここにきて投資家のマインドもシフトしてきていることがわかります。今後数年はフードテックかなりアツくなりそうです!
では、NEXTBLUEとしてどこに注目しているのか?
・Plant Based Alternativeはまだまだくる!
サステナビリティへの意識が高い欧米では今後数年はPlant Based Alternativeがアツいと思っています。植物性由来の代替肉、植物性由来のミルク等に注目しています。
また、Plant Basedではないのですが、代替肉という文脈では、実はフランスでは、フードテック領域の投資の44%が昆虫食に行っています。今年昆虫食がEFSAから承認を受けたため、European Commissionでも承認が降りるか、今注目されています。
実は私がドイツに住んでいた20年前に一瞬昆虫食ブームがきて、昆虫食カフェなるものがありました。その時は時代を先取りしすぎていて定着しなかったのですが、時代の流れ的に今回は注目されるかもしれません。
・Shelf Lifeを伸ばすプロダクト/技術に注目!
欧州では、Shelf Lifeを伸ばしてフードロスを減らすことに多くの投資家が注目しています。
Shelf Lifeを伸ばす方法として、1)プロダクト自体を加工する方法と、2)保存方法を改善する方法の二つがあると思っています。1)は例えば食品・飲料をパウダーにすることで保存期間を長くするであったり、2)は例えば食品が悪くなりかけると教えてくれる保存袋であったり。
NEXTBLUEは直近パウダー系の会社に2社投資しました。パウダーは保存期間が長く、添加物・保存料を使わないため健康的であり、嵩張らないので保存にも配送にも有利です。最近のパウダーは技術の進化によってかなり高品質で水で戻すとフレッシュジュースかと思うくらい果肉間・食物繊維感がするものが多いです。これからパウダー系がくる!と思っています。
また、新鮮さを保ち、消費期間を伸ばすことの技術にも非常に関心を持っています。こちらの領域で挑戦されているスタートアップには是非お会いしたいです!
・Everything Sustainable
欧州市場をメインにみていると、企業・投資家・ユーザーのサステナビリティへの意識の高さに驚かされます。基本的に包装はBiodegradableなものを使っていることが求められますし、消費者もサステナビリティの観点から消費行動を変えようと努力しているのが伺えます。日本ではまだまだ植物性由来のミルクは認知度が低いですが、欧州では35-40%の成人が過去3ヶ月以内に植物性由来のミルクを購入しており、文化として浸透してきているのを感じます。
また、ピンポイントですが(データが入手できたので)、チョコレートメーカーをみてみると、フランスのメーカーの60%弱、他の欧州諸国(ベルギー、ドイツ、スウェーデン、イギリス)も40%がサステナビリティをうたっています。それに対して、日本は25%、韓国に至っては2%とサステナビリティのへの意識の高さが伺えます。
今後5年、サステナビリティが本当の意味で定着するまでは、サステナビリティ系のスタートアップはトレンドの波に乗って成長できるのではないかと考えています。
少し短いですが、今回は「どれだけ欧州のフードテックがアツくて、面白いか」という総集編を書かせていただきました。
これからもフードテック関係の情報発信をしていきたいと思います。
フードテック領域で資金調達を考えているスタートアップの皆様、協業にご興味のある事業会社の皆様、お気軽にご連絡ください!
次回は今注目すべき欧州スタートアップを紹介していきたいと思います。