卵巣がんおよび肺がんの早期検出技術、更年期ケアの拡大【NEXTBLUEニュースレター10月号】

皆様こんにちは。日米欧の女性のウェルビーイング領域に投資をするベンチャーキャピタル、NEXTBLUEの大嶋です。
今月は、米国「SF Tech Week」期間中に開催されたグローバルピッチコンテストや、女性のウェルビーイングをテーマにしたパネルディスカッションに登壇しました。また日本では、井上が「MASHING UPアクセラレーター」ファイナリスト選考会で審査員を務めました(詳細は「登壇報告」をご覧ください)。
投資先Teal Healthが米TIME誌「Best Inventions 2025」に選出されるなど、女性の健康領域への注目が一層高まっています。今月の注目記事では、AI診断や更年期ケアの拡大など、グローバル市場の最新動向をお届けします。ぜひ最後までご覧ください。
【投資先ニュース】
米TIME誌|🇺🇸Teal Health、「Best Inventions 2025」を受賞

子宮頸がんスクリーニングのための在宅検査を開発する Teal Healthが、米TIME誌の「Best Inventions 2025」に選ばれました。女性が自宅で安心して検査できるよう設計され、プライバシー・快適さ・主体性を重視した設計で、予防医療へのアクセスを大きく変えるイノベーションとして評価されました。
「TIME Best Inventions」は、テクノロジー、ヘルスケア、サステナビリティなど世界を変える革新を選出する国際的な賞です。詳細は こちら。
Fierce Healthcare|🇺🇸Elektra Health、N.Y.主要保険と提携し更年期ケアを拡大

更年期遠隔医療を提供する Elektra Healthが、ニューヨーク州の主要保険MetroPlusHealthおよびFidelis Careと提携。これにより、州内女性の95%以上が保険適用で同社サービスを利用可能となりました。Elektraは、更年期前後から閉経後までを対象に、臨床医・ヘルスコーチ・同世代コミュニティによる包括的支援を提供。症状改善のみならず、情報提供や心理的サポートにも重点を置き、利用者の85%が9か月以内に症状改善を実感しています。
同社はAetna、Cigna、United Healthcareなど全米約40の保険会社と連携を拡大中。サプリ販売などの収益化を行わず、医療の質に専念する姿勢が、医師・保険双方から高く評価されています。詳細は こちら。
Sifted|🇫🇷Numi創業者Eden Banon-Lagrange、欧州テックを牽引する「100人の女性」に選出

母乳の細胞培養技術を開発する Nūmiの創業者Eden Banon-Lagrange氏が、Sifted・Sistafund・Station Fが共同選出した「欧州テック業界を変革する100人の女性」の1人に選ばれました。詳細は こちら。
Nūmiは、先進的な細胞培養技術を用いて体外でヒト乳腺細胞を培養し、自然母乳に含まれる1,500種以上の生物活性分子を再現することで、牛乳ベースの粉ミルクに代わる新たな選択肢を提供することを目指しています。
【登壇報告】
🇯🇵若手女性起業家の可能性を支援する「MASHING UP アクセラレーター」ファイナリスト選考会

日本パートナー井上が、若手女性起業家の可能性を支援する「MASHING UP アクセラレーター」のファイナリスト選考会にて、審査員として登壇しました。女性起業家18名によるピッチが行われ、社会課題に挑む多彩なアイデアが披露されました。
井上はそれぞれのピッチに対し、事業スケールの可能性や収益性の観点から実践的なアドバイスを行い、「社会的インパクトを生むためには、会社を大きく成長させることが重要。3年後に数億円ではなく30億円規模を見据えた事業計画を描いてほしい」とコメント。開催報告記事は こちらからご確認いただけます。
🇺🇸グローバルピッチコンテスト「The Ventures San Francisco 2025」

米国パートナーの大嶋が、グローバルピッチコンテスト「The Ventures San Francisco 2025」にて、Khosla Ventures、Founder Instituteなどの投資家陣と並び、審査員として登壇しました。本イベントは、サンフランシスコの「SF Tech Week」期間中に開催され、数千の応募の中から選ばれた10社がファイナリストとしてピッチ。
各社様々な形でAIを活用していましたが、競合と差別化するための独自データやユースケースについて、各審査員から具体的な質問が飛び交っていたのが印象的でした。
🇺🇸女性のウェルビーイング推進パネル
Capital, Care, & Courage: Advancing Women’s Well-Being

米国パートナーの大嶋が、SF Techweek中に開催された女性のウェルビーイングイベント、「Capital, Care, & Courage: Advancing Women’s Well-Being」に登壇しました。
本イベントは、女性のウェルビーイングをテーマに、投資・ビジネス・テクノロジーの観点から議論するパネルディスカッション。「女性のウェルビーイングとは何か」「資本はどこに流れ、どこに資金ギャップがあるのか」「女性リーダーがどのように市場やアウトカムを再定義しているのか」といったテーマについて、業界のリーダーたちと議論を交わしました。
【今月の注目記事】
Femtech Insider|🇺🇸Mercy BioAnalytics、卵巣がん・肺がんの早期検出技術でシリーズB $59Mを調達

📝概要
卵巣がんおよび肺がんの早期検出技術を開発する米ヘルスケアスタートアップMercy BioAnalyticsが、シリーズBラウンドで$59Mを調達しました。本ラウンドはNovalis LifeSciencesとSozo Venturesの共同リード案件です。
Mercyは、がん細胞が分泌する細胞外小胞(EV)バイオマーカーに着目し、血液検査によるがん初期シグナルの検出を可能にする「EV共局在プラットフォーム」を開発。主力プロダクト「Mercy Halo」は、高悪性度漿液性卵巣がん(HGSOC)の早期スクリーニング検査として臨床開発が進行中で、今後は肺がんを含む他のがん種にも適応拡大を予定しています。
🌊NEXTBLUEコメント
女性の健康スタートアップがシリーズA以降で大型資金を獲得するのは容易ではありませんが、Mercyは「女性の健康」だけでなく「がん診断インフラ」という広義の医療テーマに位置づけた点が成功要因です。当初から肺がんを主軸に据え、卵巣がんを追加適応としたことで、フェムテックの枠にとどまらずヘルステック/オンコロジー領域の一部として評価されました。
また、同社の技術は複数疾患に応用可能なプラットフォーム型技術であり、セクター問わず投資するジェネラルファンドが重視する「スケーラブルな診断基盤」を提示できたことも大きいポイントです。
今後、フェムテック企業が成長フェーズでジェネラルファンドと協調投資を実現するためには、「女性の健康」を単体のニッチ領域としてではなく、診断革命・医療アクセス格差解消・予防医療プラットフォームといった広い文脈で再定義することが重要になると考えます。
Fierce Healthcare|🇺🇸Amazon傘下One Medical、更年期ケアを全米のプライマリケアに導入

📝概要
Amazon傘下のプライマリケアクリニックOne Medical(2007年創業、2023年にAmazonが$3.9Bで買収)が、更年期ケアを開始すると発表しました。
同社は独自に開発した研修プログラムを通じ、数百名のプライマリケア医に更年期・閉経前後の診療を教育。これまで専門医に限られていたケアを、一次医療(かかりつけ医)で提供可能にする取り組みです。プログラムではホルモン療法の適正使用、心血管リスクや骨密度、メンタルヘルスなど包括的視点を重視。
更年期市場は2030年に$600B規模に達すると予測されており、Elektra Health、Midi Health、Maven Clinicなどのスタートアップに加え、大手も続々参入しています。企業側でも2025年には5社に1社が更年期ケア福利厚生を導入予定で、市場拡大が進んでいます。
🌊NEXTBLUEコメント
女性の健康領域に特化したプレイヤーではないOne Medicalが参入したことは、更年期治療のニーズやビジネスポテンシャルが「専門領域」から「マス市場」へ拡大していることを示す象徴的な出来事です。これまで医師教育・診療体制の不足がボトルネックでしたが、プライマリケアの現場で標準提供されることで、アクセスと認知が一気に進む可能性があります。
更年期ケアの最大のボトルネックは、専門教育を受けた医師が極端に少ないことです。産婦人科研修プログラムで更年期を扱うのは3分の1未満であり、更年期ケアを自信を持って提供できる医師は10%未満。供給不足が深刻です。一方、需要は急増しています。米国では5,000万〜6,500万人の女性が更年期を迎えており、成人女性の約3分の1に相当。さらに、ヘルスケアに積極的でデジタルツールに親和性の高いミレニアル世代(現在29〜44歳)がプレ更年期に突入し始めたことも追い風になっています。
これまで更年期ケアは、特化型遠隔医療を提供するスタートアップが主導する領域でした。しかし、需要の高まりを背景に、大学病院や大手保険会社、さらには州政府といった既存プレイヤー・公的部門が本格的に動き始めています。
【登壇情報】
🇺🇸UC Berkeley女性投資家・起業家イベント
Berkeley Female Founders & Funders Summit

米国パートナー大嶋が、10月24日(金)にUC Berkeleyが主催する女性投資家・起業家イベントの投資家パネル「Funder Panel: The ROI of Investing in Women」に登壇します。詳細は こちら。
🇺🇸シリコンバレーのVC、起業家が集うサミット
SV Culture Shifting Deal Making Summit

米国パートナー大嶋が、10月23〜24日にシリコンバレーで開催される「SV Culture Shifting Deal Making Summit 2025」にて、ピッチコンテスト審査員として登壇します。
本イベントは、米国Culture Shift Labsが主催する、多様性・イノベーション・社会的インパクトをテーマにしたサミット。テック、ベンチャーキャピタル、社会課題解決分野のリーダー200〜350名が集まり、これまでに累計$2B超のディール創出を実現しています。詳細は こちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!来週からは、米ラスベガスで開催される世界最大級のヘルスケアイベント「 HLTH 2025」に参加予定です。次号では、海外のデジタルヘルス・女性の健康市場のトレンドや、現地投資家・起業家との対話を特集としてお届けします。
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