Maven Clinic、消費者向けプラットフォームをローンチ。DTCへの原点回帰【NEXTBLUEニュースレター3月号】
皆様こんにちは。日米欧の女性のウェルビーイング領域に投資をするベンチャーキャピタル、NEXTBLUEの大嶋です。
米国の女性の健康領域においては、「医療の受け方そのものが再設計され始めている」動きを強く感じています。従来の対面診療を前提とした医療提供モデルから、在宅・デジタル・非同期といった新しい接点への移行が、複数のプレイヤーを通じて同時に進んでいます。
本号では、こうした構造変化を象徴する事例として、Mavenの戦略転換、投資先の取り組み、そして国内外の動きを通じて、女性の健康領域における「アクセスと体験」の再定義について整理します。
【今月の注目ニュース】
🇺🇸 Maven Clinic、消費者向けプラットフォームをローンチ
DTCへの原点回帰
▍概要
米国の女性向けバーチャルケアプラットフォームMaven Clinicは、新たに消費者向け(DTC)の統合型ケアプラットフォームを発表しました。
同社はこれまで、主に企業・保険者向け(B2B)モデルで成長し、2,300社以上の雇用主・保険会社と提携、約2,800万人の対象ユーザーにサービスを提供してきました。
今回のDTC展開は、その既存事業を置き換えるものではなく、補完的な位置づけとされており、創業当初の「消費者起点」のモデルに立ち返る動きとなります。
新プラットフォームでは、産婦人科、メンタルヘルス、栄養、ドゥーラなど30以上の専門領域を横断し、単発の診療ではなく「統合された継続ケア」として提供。妊活・妊娠・更年期・代謝健康まで、ライフステージ全体を一貫した臨床履歴のもとで管理できる設計となっています。
また、GLP-1を含む代謝ケアや、更年期・周更年期のホルモンケアも統合的に提供し、従来のような個別アプリ・個別サービスの分断を解消することを目指しています。
▍NEXTBLUEの分析
なぜMavenは、いま改めてDTCに回帰したのか。理由は大きく3点に整理できると考えています。
①「分断された体験」を統合するための必然的な進化
近年、GLP-1やホルモン療法、メンタルヘルスなど、女性の健康に関するサービスは急速に増加しました。一方で、ユーザーは目的ごとに複数のアプリやサービスを使い分ける必要があり、同じ情報を何度も入力し、ケアがつながらないという課題が顕在化しています。
Mavenは、複数サービスを行き来する煩雑さを前提に、単一機能の積み上げではなく、継続的かつ統合されたケア体験そのものを提供するプレイヤーへ再定義しようとしていると捉えています。
② B2Bで構築した臨床基盤が、DTC展開を可能に
創業初期のMavenはDTCモデルからスタートしましたが、その後は「雇用主が最も買いやすい」という明確な市場ニーズを捉え、B2Bへとピボットしました。
企業チャネルは、一度契約を獲得すれば広範なユーザーに一括で提供できるため、効率的なスケールが可能です。同社が2,300以上の雇用主と提携し、2,800万人規模まで拡大した背景とも整合します。
今回のDTC回帰は、この成功を否定するものではなく、B2Bで10年以上かけて構築した臨床ネットワーク・データ・オペレーションを、直接消費者に展開できるフェーズに入ったことを意味します。
③ DTCは「新しいプロダクト開発ループ」として機能
今回提示された、統合バーチャルケア、女性特化のGLP-1プログラム、包括的ホルモンケアといった新領域は、今後、雇用主・ヘルスプラン向けにも展開される予定です。
つまりDTCは単なる販売チャネルではなく、新しいサービスを市場で検証し、その需要と有効性を可視化した上でB2Bへ展開する”実験と開発の場”として位置づけられています。
この「DTC → B2B」の逆流は、従来のヘルスケアモデルには見られなかった新しい構造です。
総じて、今回の動きは、DTCかB2Bかという二項対立ではなく、両者を横断する”ハイブリッド型ヘルスケアモデル”への移行を象徴しています。女性の健康領域においても、単一プロダクトや単一チャネルではなく、ライフステージ全体をカバーする統合プラットフォームが主戦場になりつつあると考えています。
本記事は、NEXTBLUEが運営する Femtech Global Insights の配信内容の一例です。
国内唯一の海外フェムテック/ヘルスケア特化プラットフォームとして、週3〜4本の海外ニュースを、投資家視点の解説コメント付きでお届けしています。
【投資先紹介】
🇯🇵 Glocalist:
イラン情勢・関税制裁・エネルギー危機——地政学リスク時代のグローバルガバナンスをAIで強化するレギュラトリー・インテリジェンス・プラットフォーム
イラン情勢の緊迫化、関税制裁、エネルギー不足によるサプライチェーンの混乱など、地政学リスクが急速に高まっています。国際情勢が急速に変化する世の中で、各国の規制に素早く対応するために、すでに多くの大企業で活用されているのがGlocalistです。
Glocalistは、世界各国の官公庁が発行する法律・規制・政策文書を毎日自動収集し、AIが即時に翻訳・要約・一元管理するレギュラトリー・インテリジェンス・プラットフォームです。「駐在員頼みの情報収集」から脱却し、本社と現地が一体となってリスク検知から対策立案まで、組織横断で対応できる環境を実現します。
現在、米国・東南アジア・オセアニアなど12か国に対応し、中東・欧州・アフリカを含む50か国へ順次拡大中です。ご関心のある方は、下記お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
【投資先ニュース】
日経新聞|🇯🇵新興ジョサンシーズ、助産師の復職呼びかけ キャリア開発の催し
国内最大規模の助産師ネットワークを構築し、妊娠から育児までのトータルサポートを提供するジョサンシーズは、同社が主幹事を務める「産前産後ケアイノベーション協会」として、助産師のキャリア支援をテーマとしたイベントを初開催しました。助産師や看護師など約50名が参加し、キャリア相談や業界課題に関する議論が行われました。
イベントでは、助産師資格保有者の過半数が現場を離れているという課題が共有され、育児や介護などで離職した有資格者の復職支援の必要性が強調されました。また、プレコンセプションケアを含め助産師の役割が拡張していることを背景に、リスキリングや多様なキャリア設計の重要性についても議論がなされました。詳細はこちら。
🇺🇸Teal Health、女性の健康に関する意識・行動・医療アクセスの実態をまとめたレポートを発表
在宅子宮頸がんスクリーニング検査機器を提供するTeal Healthは、女性の健康に関する意識・行動・医療アクセスの実態をまとめたレポート「State of Her Health 2026」を発表しました。
本レポートでは、75%の女性が「時間的負担」を理由に医療受診をスキップする可能性があると回答し、さらに29%が診察に3時間以上を要すると回答するなど、医療アクセスの非効率性が明らかになりました。また、81%の女性が家族など他者を優先し、自身の健康を後回しにしている実態も示されています。
一方で、87%が「信頼できる在宅検査があれば予防医療を継続しやすい」と回答しており、利便性の高い医療体験へのニーズが顕在化しています。加えて、95%が最新の臨床知見に基づく医療提供者を求めているほか、情報取得手段も変化しており、41%がSNSインフルエンサー、27%がAIを活用するなど、新たなヘルスケア接点の台頭も示されました。
Teal Healthは、自宅で検体採取が可能な子宮頸がんスクリーニングとバーチャル診療を組み合わせることで、こうした構造的課題の解決を目指しています。本レポートは、女性の健康領域における「アクセス」「行動」「情報」の変化を定量的に示す内容となっています。詳細はこちら。
【メディア掲載】
lumily|女性の挑戦に、お金が集まる社会へ。
NEXTBLUE井上加奈子が語る、女性起業家が活躍する未来
女性のキャリアやライフスタイルを発信するメディア、lumilyにて、日本パートナー井上のインタビュー記事が掲載されました。記事内では、女性のウェルビーイングと女性起業家に特化したファンドを運営するに至った背景や、投資家の視点から見た女性起業家の可能性、そして日本の女性の健康市場の現状と展望について語っています。詳細はこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
米国では、在宅検査や遠隔医療に加え、AIやソーシャルメディアを通じた情報取得が急速に普及し、医療との接点はこれまで以上に分散・多様化しています。単に医療を「提供する」だけでなく、ユーザーがどこで意思決定を行い、どの接点から医療に入るのかを再設計することが重要になっています。
今回取り上げた事例からも明らかなように、女性の健康領域は「特定のサービス」ではなく、「体験全体の設計」へと競争軸が移行しつつあります。プロダクト単体ではなく、アクセス・継続・信頼をどのように統合するかが、今後の成長を左右する要素になると考えています。
今後も、こうした構造変化を捉えながら、女性の健康・ヘルスケアイノベーションの最前線をお届けしてまいります。
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