女性のホルモンデータをめぐる競争:Clair Healthが$11.6M調達【NEXTBLUEニュースレター6月号】

女性のホルモンデータをめぐる競争:Clair Healthが$11.6M調達【NEXTBLUEニュースレター6月号】

皆様こんにちは。日米欧の女性のウェルビーイング領域に投資をするベンチャーキャピタル、NEXTBLUEの大嶋です。

今月は、女性向け非侵襲型・継続ホルモンモニターの開発でKhosla Venturesなどから$11.6Mを調達したClari Healthを取り上げました。ウェアラブルが「歩数・心拍」を測る時代から「ホルモン」を継続的に可視化する時代へ——この転換が女性の健康インフラをどう塗り替えようとしているか、NEXTBLUEの視点から解説しています。詳細は、今月の注目ニュースをご覧ください。


【新規投資先:🇯🇵iiba】

NEXTBLUEは、東京を拠点に子育てインフラを構築する株式会社iibaのシリーズAラウンドに参加しました。本ラウンドはSpiral Innovation Partners、京王れーるファンド、東京海上ホールディングス、グローバル・ブレインとともに、第三者割当増資により総額約3億円を実施。あわせて最高執行責任者(COO)に浅山龍文氏、最高技術責任者(CTO)に廣戸裕大氏を迎え、新経営体制を発足しました。

iibaは、遊び場・飲食店・習い事など子育てで利用する場所に特化したUGCデータ基盤『iiba』を運営。全国10万件以上のスポット情報を掲載するプラットフォームへと成長し、この1年でスポット登録数は+556%、売上は+700%を記録しています。自治体DX推進や地域事業者向けシステムの提供など、地域課題解決に向けた連携も拡大中です。

今回の調達を機に、「場所を探すアプリ」から「発見・行動・決済」を一気通貫でつなぐ子育て世帯の生活インフラへと大規模リニューアルを予定。自治体の子育て支援予算という「上流」と、子育て世帯の生活という「下流」を垂直統合するモデルの全国展開を加速します。詳細はこちら

▍NEXTBLUEのコメント

子育てを取り巻く課題は、支援やサービスが存在していても、必要な人に十分に知られず、届いていないことにあります。iibaは地域、企業、自治体をつなぎ、必要な情報や機会へ自然にアクセスできる新たな子育てインフラを構築しようとしています。

CEO逢澤さんの圧倒的なリーダーシップと、多様なステークホルダーを巻き込む力に大きな可能性を感じ、今回投資させていただきました。NEXTBLUEとしても、iibaの挑戦を全力で支援してまいります。


【今月の注目ニュース】

▍概要

Stanford出身のJenny Duan氏とAbhinav Agarwal氏が共同創業したClair Healthが、女性向けの非侵襲型・継続ホルモンモニターの開発に向けて$11.6Mを調達しました。今回のラウンドはKhosla Venturesが主導し、a16z speedrun、AI in Health Fund、Cartan Capitalなどが参加。23andMe創業者のAnne Wojcickiもエンジェル投資家として参加しています。

製品はジュエリーのようなデザインのリストバンド型ウェアラブルで、10個のバイオセンサーと130以上の独自バイオマーカーを用いて、エストロゲン、プロゲステロン、LH、FSHを継続的にモニタリングします。血液検査・尿検査・針を使わずにホルモン状態を把握できる点が最大の特徴で、2026年11月のローンチを予定。ローンチ前にすでに25,000人以上のウェイトリストを獲得しています。

ベータテストでは、従来4段階で説明されてきた女性のホルモンサイクルを、9つの異なるサブフェーズとして識別したとしており、既存のウェアラブルが男性の生理や28日周期を前提に設計されてきたことへの課題意識が事業の根幹にあります。妊活・排卵タイミングの把握、PCOS、フィットネス・リカバリー、更年期・閉経周辺期の体調管理など、幅広いユースケースを想定しています。

▍NEXTBLUEの分析

Clair Healthの資金調達は、女性のホルモンヘルス領域において、「単発の検査」から「継続的なモニタリング」へと市場の関心が移行していることを象徴するニュースです。

これまで女性のホルモン状態は、血液検査や尿検査など、限られたタイミングで切り取られることが多く、日々の体調・睡眠・気分・パフォーマンス・妊孕性・更年期症状との関係を立体的に理解することは困難でした。一方で、Clair HealthImpliEli Healthのような企業が登場し、ホルモンをより高頻度に、より身近に、より低負担で測定する技術が進化しています。OuraやWHOOPなどの大手ウェアラブル企業も女性特有のホルモン変動を前提にした機能を強化しており、この領域がニッチなフェムテックから次世代のパーソナルヘルスインフラへと広がり始めていることを示しています。

この流れが加速している背景には、女性の健康が従来の医療システムの中で十分にデータ化されてこなかったことがあります。月経周期、妊活、産後、更年期といったライフステージごとの変化は、多くの女性にとって日常的な課題であるにもかかわらず、客観的なデータに基づいて理解・介入する手段は限られていました。継続モニタリングは、この"見えなかった変化"を可視化し、個人にとっても、医療者にとっても、より精度の高い意思決定を可能にする可能性があります。

今後の鍵は、データを集めること自体ではなく、そのデータをどのような行動変容・医療判断・治療最適化・保険や雇用主向けソリューションにつなげられるかです。ホルモンデータは、症状・睡眠・活動量・ストレス・食事・服薬・検査結果などと組み合わさることで、妊孕性・更年期・代謝・メンタルヘルス・パフォーマンス管理など、複数のユースケースに展開できるプラットフォームになり得ます。

NEXTBLUEの投資先であるEli Healthにとっても、この市場環境は非常にポジティブだと考えています。Eliは、唾液を用いた即時ホルモン測定により、ユーザーが自宅で簡単にホルモン状態を把握できる体験を提供しています。Clairのようなウェアラブル型、Impliのような臨床用途に近いパッチ型、そしてEliのような即時・低負担な在宅検査型が並び立つことで、ホルモンモニタリングというカテゴリーそのものの認知が高まり、ユーザー教育、医療者理解、パートナーシップ形成が進みやすくなると見ています。

女性の健康は、これまで主観的な症状や断片的な検査に依存してきた領域です。今後、継続的なホルモンデータが蓄積されることで、女性一人ひとりの身体の変化をより正確に理解し、予防、診断、治療、日常のコンディション管理までをつなぐ新しいヘルスケアの基盤が生まれる可能性があります。Clair Healthの今回の資金調達は、その大きな流れを示す重要なマイルストーンだと感じています。

最後に、Clair HealthとEli Healthの比較を行うと:Clairの強みは、ウェアラブルによる低摩擦な体験と、継続データを活用したコンシューマーヘルスプラットフォーム化の可能性にあります。一方で、現時点ではホルモンを直接測定するというより、生体信号から推定するモデルであると見られ、精度や臨床的有用性の検証が今後の重要な論点になります。NEXTBLUEの投資先であるEli Healthは、唾液を用いた即時ホルモン測定により、より直接的にホルモン状態を把握できるアプローチを取っています。

Clairのようなウェアラブル型はカテゴリ認知を大きく広げる一方で、妊活、更年期、ストレス、ホルモン治療など、具体的な意思決定に近いユースケースでは、Eliのような測定精度と信頼性を重視するアプローチにも十分な勝ち筋があると考えています。


本記事は、NEXTBLUEが運営する Femtech Global Insights の配信内容の一例です。

国内唯一の海外フェムテック/ヘルスケア特化プラットフォームとして、週3〜4本の海外ニュースを、投資家視点の解説コメント付きでお届けしています。


【投資先ニュース】

多様な人材の可能性を広げる採用・キャリア領域のHRテック企業、bgrassは、会話型採用AIパートナー「フェアパス」の導入1ヶ月レポートを公開しました。フェアパスは、候補者対応・日程調整・リマインド・評価回収・対応漏れ確認など、採用担当者が日々担う採用オペレーションをAIが支援するサービスです。

今回のレポートでは、少人数で採用戦略と日々の運用を両立する必要があった企業において、フェアパス導入後に候補者対応や日程調整、評価回収などの業務が大きく効率化され、採用担当者が本来注力すべき候補者との対話や採用戦略に時間を使えるようになったことが紹介されています。

採用担当者がシステム操作や対応漏れ確認に追われるのではなく、AIをパートナーとして活用しながら、候補者体験と採用成果の向上に集中する——フェアパスは、こうした「AI駆動採用」へのシフトを後押ししています。導入レポートの詳細はこちら

子宮頸がんスクリーニング用の在宅検査を開発・提供するTeal Healthは、Washington University School of Medicine in St. Louisと戦略的研究提携を行い、子宮頸がんスクリーニングへのアクセス改善を目的としたHPV在宅自己採取キットの実証パイロットを開始しました。

本パイロットは、Teal HealthのFDA承認済み在宅HPV自己採取キット(Teal Wand)を、病院の予約システムを通じてではなく、フードバンク・地域ヘルスフェア・ウェルネスイベントといった生活に密着したコミュニティの場で直接配布するという点が最大の特徴です。対象地域はイリノイ州・ミズーリ州で、定期検診から取り残されてきた女性たちへのリーチを目指しています。

研究では、参加者がQRコードから自分で登録する方法と、現地ナビゲーターが登録・教育をサポートする方法の2つのオンボーディング手法を比較し、キット返送率、遠隔医療の完了率、異常結果が出た場合のフォローアップケアへの接続、患者体験などを評価します。

今回の取り組みは、Teal Healthが在宅HPV検査を通じて、子宮頸がん検診の物理的・心理的ハードルを下げ、より多くの女性に予防医療を届けるための分散型スクリーニングモデルを検証する重要な一歩です。詳細はこちら

母乳の細胞培養技術を開発するNūmiが、欧州イノベーション会議(EIC)の支援プログラムEIC Acceleratorに採択されました。

EIC AcceleratorはEUのHorizon Europeプログラム傘下の最高峰スタートアップ支援制度で、2026年の総予算は€634Mに達します。今回の採択により、Nūmiは、€2.5Mの助成金に加え、最大€15Mにのぼる出資へのアクセス権を獲得しました。

今回の採択は、Nūmiの技術とビジネスモデルがEUの独立した専門家パネルによる厳格な評価を通過したことを意味します。詳細はこちら


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今後も、女性の健康・ヘルスケアイノベーションの欧米最前線をお届けしてまいります。

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